手術後の管理について
『入院手術』におけるもっとも優れた点は、『安心』です。
手術後における『痛み』や『出血』の不安は手術当日に最も強いものです。また、肛門科の手術では『術後はじめての排便』『術後はじめての入浴』に不安を持つ方も多いでしょう。『術後の創部』も排便をしながらゆっくり治していかなければならず、処置を自分でできるようにしておかなければいけません。
排便(肛門術後の最も大事なポイントは排便コントロールです)
- 術後1か月ほどで創部はしっかりしてきます(縫合した創部が開き、術後出血をしてしまう心配がなくなります)ので、それまでは創部を安静に保つため、強く力んだり、硬い便をしないよう努めます。
運動、アルコール、遠方への旅行は控えてください。 - 術後1か月くらいで問題無いようなら緩下剤を徐々に減量し、本来のご自分の普通便に近づけていき、肛門をストレッチしていきます。(怖がってストレッチしないと伸び縮みが悪い硬い肛門になってしまいます。元々便秘の方は緩下剤をやめる必要はありません)
痛みと出血
- 術後2週間ほどで炎症が引いてきます。入浴で下半身を温めることも有効です。
- 痛みはだんだん良くなり、出血量もだんだん減ってきます。統計ではおおよそ術後2週間で痛みのピークの半減→次の2週間でさらに半減になり、術後1か月ほどでひりひりした、皮膚の痛み程度になり術後6~8週間で、ほぼ痛みは無くなってきます。
痛みのスケールは
VAS 視覚的アナログスケール
NRS:NUMERICAL Rating Scale 数値評価スケール
FRS 表情尺度スケール
がありますが当院では術後にその日の排便状況や疼痛評価を記入する自己調査用紙を渡しNRSとFRSを組み合わせた表を基にその日の夜就寝前に記入していただいています。
NRSの一般的に使用されている聞き方は『今までに経験した一番強い痛みを10として今の痛みがどのくらいか?』と患者側に数値評価してもらう方法です。
創部の処置
- 指の柔らかい部分で優しく創部を洗浄し、便がべったり付着していない程度が理想です。(浸出液やわずかな出血まで落とす必要はありません。)
- 洗浄後に押し拭きで水気をとり、決して擦らないことです!(軟膏は油分であり、水気があるとはじいてしまいます)
- 術後10日程で縫合糸がほどけてきます。ちょうどそのころに痛みが良くなってきて油断がでてきます。
『強く力んだ瞬間に手術の傷が裂けて出血!』なんてことがおきてしまいます(図のレッドゾーン)
黄色→青色ゾーンになるまで油断せず、肛門に気を使ってください。
退院後通院
- 通常は退院後に何回か通院し創部のチェックを受け、排便の状況を伝えましょう。内服薬や軟膏の追加処方も必要です。